コラム

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狭窄しない穿刺の方法を考える

私はこれまでシャントPTAの治療に携わってきました。最近では、PTAは一般に普及し、狭窄してもPTAで直せば大丈夫という考え方が普及してきました。これはこれでよいのですが、どうやってPTAしないでもシャント血管が狭窄しないかを考えなくてはなりません。

PTAを施行した患者さんに「どうやったらまた狭窄しないで済みますか?」とよく問われます。「抗血小板剤を飲む」、「体重増加を抑える」、「血圧を安定させる」、「ヘモグロビンを安定させる」、「血糖コントロールを良くする」、、、、などなどいろいろあるとは思いますが、実は一番重要なのは、「穿刺の方法」だと思っています。
現在、多くの施設で、毎回似たような場所に繰り返しさす方法をとっていると思います。この方法だと、穿刺している血管の部位のみが太くなり、医療者は穿刺がしやすくなります。また、その場所の血管壁が薄くなり、皮膚も薄くなるため、患者さんは穿刺が比較的痛くなくなります。しかし、血管は実は悲鳴をあげているのかもしれません。部分的な瘤形成は血液の乱流を起こし、血管抵抗の乱れをも起こします。実際、穿刺部位付近が狭窄してくる症例を多数見かけます。
御自身も透析を受けていらっしゃる、尊敬する鈴木一之先生(かわせみクリニック。仙台市)は、この「ふた瘤ラクダ法」を推奨せず、「縄ばしご法」を実践されています。「縄ばしご法」とは、毎回穿刺場所を少しずつずらして穿刺する方法です。時々痛いところもあるようですが、この方法を実践しますと、血管が徐々に全体的に緩やかに拡張してくそうです。
もう一つ、「ボタンホール法」という穿刺もあり、こちらはまったく同じ穴に穿刺していきます。この方法では血管にほとんど変化がおきず、しかも穿刺痛もすくないため、非常によい方法だと思います。
おぐら内科・腎クリニックでも、シャントが広範囲に使える人には「縄ばしご法」を、範囲が狭い人には「ボタンホール法」を積極的に指導してきます。これは、スタッフへの教育でもあり、患者さんへの教育でもあります。
今、行っている医療が最善、最新とは限りません。ともに考え、最善の透析を考えていきましょう。

(鈴木一之著「しっかり透析のヒケツーエビデンスに基づく患者さん本位の至適透析」より)

            おぐら内科・腎クリニック (栃木県小山市)  小倉 学

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